くじに当たった気分>龍ケ崎・若柴の森のカフェ
- 2018/06/12
- 22:33
鬮──、かなりの難読漢字である。佐貫駅から龍ケ崎ニュータウンに向かう途中、脇道に迷い込んだら、こんもりとした森に「鬮神社」の石標を見かけた。小径を回り込んで入ったカフェで、のんびりした口調の女主人に「くじ」と読むのだと教わった。しかもスマホに「くじ」と入力すると「鬮」に変換できることに驚いた。26画もある。さらにこの漢字の部首は「門がまえ」ではなく、「とうがまえ」という。重ねての新発見であった。
- 鬮神社 スダジイの大木の間に小さな社が見える。そこを登っていくと「しゃもじ」がたくさんぶら下がった「くじ神社」がある。この神様を熱心に拝んだ江戸時代の町人が「大当たり」の富くじを取ったという伝承がある。(龍ケ崎市民環境会議文化環境部会編「水戸街道『若柴宿』お宝さがし隊」)
そう神社を紹介するお散歩マップも、女主人から頂戴した。リョウコさんという。彼女の勧めで神社に参ってみると、たしかにしゃもじが奉納されていた。絵馬の代わりの杓文字(しゃもじ)ということらしく、「合格祈願」などに交じって宝くじへの願掛けもちらほら。「当籤(せん、くじは籤と書くのが一般的)御礼」の文字は見られなかった。
「若柴宿」は旧水戸街道8番目の宿場だそうで、地区南東の八坂神社から北西の金龍寺に至る約500メートル区間が街道筋。今も屋敷跡や旧家の門構えをみることができる。
- 金龍寺 曹洞宗の古刹。新田義貞の裔流、由良国繁が上州太田からこの地に移封され、それと共に菩提寺の金龍寺がここに移った。(1666年)新田一族の墓や曹洞宗開祖の道元が中国から持ち帰った国指定重要文化財「絹本着色十六羅漢像」がある。(同上)
カフェから牛女坂を下り、杉林のなかを通って街道筋に向かうと、御手洗(みたらし)の池という標札のかかった地点に出る。池というがケヤキの大木の根っこ部分が円周1メートルほどの窪地になっているだけ。穴の暗がりをのぞいても水たまりすら見えない。
- 御手洗の池 星宮神社への参道が登りになる角に御手洗の池がある。現在は底の部分が湿っている程度のごく小さい池だ。伝説では星宮のお使いのウナギを誤って捕まえた時はこの池に放したといわれ、古くからの土地の人は今でもウナギを食べない人もいるという。(同上)
若柴町は、メーンストリートである旧水戸街道をはさむように、北東の林間を縫う小径と南西のねがら道がほぼ並行に走っている。道路のさらに北東側が龍ケ崎ニュータウン北竜台地区、南西側が常磐線佐貫駅東口となる。都市開発のなかで自然と歴史がぽっかり奇蹟的に残された空間なのだ。
- ねがら道 台地の根際にある道を言う、根絡道のこと。南西向きの傾斜面は密生した椎(シイ)樫(カシ)などの照葉樹林帯で、道沿いにはヤブツバキが群生し、枝を伸ばしトンネルのようになっており...(同上)
雑木林と屋敷林が織りなすコースは、アップダウンもあって森林浴と散策が同時に楽しめる。一周して小一時間、カフェに戻るとリョウコさんが「おかえりなさい」と迎えてくれた。お手製寒天のクリームあんみつはコーヒー付き700円。
営業は水~土曜日限定で、冬場は休みがちというスローライフを絵に描いたようなお店だった。出会いは僥倖(ぎょうこう)で、くじに当たったような気分にさせられる。「当籤御礼」とばかり、リョウコさんが色鉛筆で描いた鬮神社の絵はがき(100円)を買い求めた。
【cafe丘の家】龍ケ崎市若柴町1979-10 電話080(5487)3532
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